闘う
重松清の「ナイフ」を読む。坪田譲治文学賞受賞作品。
短編5編が入っている。
重松清が描く「イジメ」の世界はリアルだ。全くオブラートに包まれていない。よくここまで小学生や中学生の気持ちに近づいてかけるなあと実に感心する。
しかし、このリアルさがいいのだ。嘘じゃないと思わせるものには、説得力があり、それだけで十分にひきつけられる。でも、もっといいのは、子供の立場だけではなく、それを取り囲む大人の姿もきちんと描けていること。そして、作家本人の言葉を借りて言うなら、「ひねくれていて、不機嫌で、けれど否定ではなく肯定を志向して」いるところだ。投げっぱなしにしていない。重いテーマへの書き手の責任を感じる。
5編の中の登場人物は皆「ひとりぼっち」だ。そして何かと「闘っている」。殴りあったりとかそんなんではない闘いだけど。皆が「勇者」である。
5編の中でも「エビスくん」はとても好きな1篇。ぽろぽろ泣けたなあ。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント